法律コラム

生命保険金と遺産分割(最高裁平成16年10月29日決定)

投稿者 admin on 3月 28, 2011

親が亡くなって、その親が契約していた生命保険の保険金受取人として保険金を受け取った場合、それは相続手続とどのような関係があるでしょうか?簡単に解説します。
    
保険金の受取人が亡くなった親の名前になっていたり、相続人と書いてあったりすると、保険金は相続財産の一部となり、その保険金をどのように分けるかというのは遺産分割協議の対象となり、相続人の話合いで決まります。しかし、その受取人が、誰かに特定されている場合、保険金の請求権は受取人の固有の権利で、遺産の受取りではないとされています。
しかし、税務的には、生命保険金が遺産にあたる場合も、受取人が指定されていてその受取人の固有資産に該当する場合も、保険金取得は、相続税として処理される取り扱いになっています。
問題になるのは、相続人の誰かが一人だけ多額の生命保険金を受け取っているような場合です。最高裁の平成16年の決定は、このような場合の考え方について結論を出しています。
 
 
 
この事例は、分割協議が済んでいる遺産が6000万円相当程度あり、遺産かどうかが争われ、結局遺産であることが確定した土地(1149万円)の分割が問題となった時点で、相続人の一人が合計800万円弱の生命保険金を受け取っていることが特別受益に該当するのではないかと、他の相続人が最高裁に不服申立てした事案です。
この最高裁判例は、生命保険金は遺産に属するものではないというそれまでの判例の原則を確認して、この事例の申立を退けています。
ただ、注目されるのは、この判例が、生命保険金を受領した相続人とその他の相続人との間に生ずる不公平が、民法903条の趣旨(特別受益の規定)から考えて、到底是認することが出来ないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、当該保険金を、特別受益に準じて持ち戻しの対象とする(つまり、遺産として取扱う)のが相当、という判断を下していることです。つまり、保険金は原則として遺産には入れないが、特別の場合には遺産の扱いをすることもあり得る、という新しい判例です。
 
この判例は、前記の特段の事情の有無については、保険金の額、遺産の総額に対する保険金額の比率のほか、同居の有無、被相続人の介護に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及びその他の相続人と被相続人の関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきとしています。
 
 
なお、ある相続人の保険金を特別受益に準じて持ち戻しするような場合で、そのほかの相続人が遺留分の侵害を受けている場合には、この保険金を遺留分額算定の基礎に入れることが出来るかどうか、また、遺留分減殺の対象とすることが出来るかどうかという問題がありますが、この判例はそこまでの言及はしていません。
 
 
※ 上記判例全文はこちらから読むことができます。