法律用語の使い方について
法律に用いられている用語や,法律家の用いる言葉には特殊なものがいくつかあります。
代表的なものを幾つか取り上げてみましょう。
「悪意」 日常生活では,他人を憎み,害を加えようとする気持ちのことを指しますが,民法の中で用いられる場合,単に特定の事実を知っていることを指し,価値判断は含まれていません。
「業務」 日常生活では職業上の仕事のことを指しますが,刑法の中では,"人が社会生活を送る上での反復的な社会活動や私的な行動"という意味になります。
「果実」にも,法的な文脈で用いられる場合には,家賃や利息などある物から生じる収益物全体を指すことになります。
その他,接続詞や副詞の使い方にも特有のきまりがあります。
どの専門分野にも特有の表現やことばはあるものですし,文章の意味を正確に伝えるためにはそれなりに有用であることは間違いありません。
しかし,法律が社会一般に通用する規範として存在していることに照らすと,法律用語もあまり日常生活の言葉と離れるべきではないといえますし,もし法律用語の特有さのために法律が使いにくいとか,法的な手段をとることに躊躇するようなことがあるなら,それは解決するべき問題であると思います。
近年,民法や刑法,商法など主要な法律が現代語化されるなど,法律の条文もできるだけわかりやすくすることが目指されています。私達実務家も,意味の正確さを保ったまま,わかりやすい表現を用いていかなければならないと思いながら,仕事に取り組んでいます。