法律コラム

医療法人の出資持分

投稿者 admin on 7月 28, 2011

医療法人には財団形式の法人と社団形式の法人とがあるのはご存知のとおりです。その社団医療法人には、出資持分の定めがあるものと定めがないものとがあるのも常識でしょう。しかし、医療法人のことを決めている医療法にはこの出資持分についてほとんど規定らしいものはなく、出資持分の取扱いはその社団医療法人の定款で自由に決めてよいということになっています。
 
 
例えとして、社団医療法人と株式会社を比較してみましょう。株式会社の最高決議機関は「株主総会」で社団医療法人のそれは「社員総会」ですから、会社の「株主」に対応するのが医療法人では「社員」です。この「社員」の資格は、定款で決めるようになっているのですが、出資持分の取扱いを自由に決めることが出来るのですから、社員の資格も出資持分権者であるかどうかと無関係に決めることが出来ます。もちろん、定款で社員は出資持分が必要と決めることも出来ます。ただ、法律で社員の議決権は各1個と決められています。ですから、株主がその株数の多さに比例して議決権を行使出来るのとは異なり、出資持分の多さは議決権とは無関係なのです。このように法律は出資持分にまことに冷淡な態度です。
 
 
これにひきかえ医療法人の出資持分者の存在に好意を寄せているのが税務当局です。それは、税務当局は出資持分を資産価値あるものと捉え、出資持分が動く場面で出動出来る、つまり、出資持分関係者に対する課税が出来ると考えているからなのです。
 
 
 
この課税問題に関連して、私が不合理だなと思っていることを一つご紹介したい。
一つは、出資限度額法人における出資持分権者の払戻請求に関連した課税です。医療法人では配当が禁止されているので、一般に医療法人では利益が内部留保され、その資産が設立当初の出資総額に比して膨れあがっていることがほとんどです。そういう医療法人などで出資持分に応じた払戻請求を受けた場合は、払戻額は当初の出資額に比べて利益留保分だけ大きくなります。この増大した払戻を受けた者には、その増大分が配当として課税されます。それはいいのですが、出資持分の割合が大きい場合には、払戻原資が不足して医療機関を維持出来ないことも起こり得ます。
 
 
そのようなことを防止するために考えられたのが、出資持分の払戻請求を受けた際に旧厚生省のモデル定款では、医療法人の解散の際の残余財産の分配についても、当初の出資額の限度に限る、と規定するようになっています。このような医療法人を出資限度額法人と呼んでいます。
 
出資限度額法人の場合、出資持分権者が払戻請求をしても、その払戻は当初の出資額で済みます。つまり医療法人としては、利益留保分のその持分割合だけ払戻しをせずに済んだのです。問題は、その払戻をせずに済んだ分だけ、他の出資持分権者が利益を得たとみなされて、贈与税課税されるということなのです。他の持分権者も、将来払戻請求をしても、得られるのは出資額に限られるはずです。それなのに、他の人の払戻請求の反動で贈与財課税を受けるとは、不合理きわまりないと思います。
  
税務当局は、医療法人の定款は変更可能だから、出資額限度法人から本の限度なし法人にいつでも戻れるからなどと理由を述べているようですが、全く説得力はありません。
 
わたしの知る限りではこの課税を争ったケースはないようです。身近にそのようなケースが起これば是非争ってみたいと思っているのですが。
  
ちなみに、出資限度額法人への定款変更は、社員総会の決議で行なわれます。その変更は出資持分権者にとって払戻額が少なくなるという点では不利益な変更ですから、社員総会で定款変更が決まっても、全ての出資持分権者の同意がいるのではないかという疑問が生じます。しかし、判例は、出資持分限度額法人への定款変更は必ずしも出資持分権者の同意を要しないという傾向のようです。
 
 
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