法律コラム

セブンのビジネスモデルにメス (セブン判決その2)

投稿者 admin on 10月 7, 2011

 この判決をお読みになった方は、セブンのように名の通った大企業がこんな重要な点についてなぜ説明をしなかったのだろうか、値下げ販売をさせないためになぜ圧力までかけたのだろうかと疑問に思われたかもしれません。


  答えは簡単です。これがセブンのビジネスモデルの一つだからです。セブンは、ローソン、ファミリーマートその他のフランチャイズチェーンと激しく競争をしています。みなさんの自宅や職場の近くで、セブンのコンビニと他のチェーンのコンビニが近い場所に出店していないでしょうか?どこのチェーンも売れそうな地域を見つけると、そこに加盟のコンビニをどんどん出店するという事業展開をしています。セブンは、各店舗が現状の売上に対応した仕入をしていくというだけではこの競争に勝てない、各店舗が積極的に事業拡大する必要がある、そのためには商品の仕入を増やして、店内に商品があふれるほど置いているという状況をつくり、販売していくことだと言うのです。しかし、そうすれば、どうしても売れ残りが出て廃棄が出ます。廃棄商品のリスクを一切負わずに、加盟店の負担において積極的な攻めの販売のための仕入れをさせることができるというのがセブン方式です。この方式だと、廃棄ロスがいくら出ても加盟店負担ですから、セブンの腹は傷みません。また、同じ売上額であっても、堅めに仕入れて廃棄が少ない場合より、多めに仕入れて廃棄をたくさん出した方がロイヤリティが増えるといううまみもあるのです。そこで、セブンは加盟店に対し仕入れを増やさせるという方針をとったのです。セブンの従業員が加盟店を訪問して、加盟店に仕入れを増やすよう厳しく要求し、圧力をかけていったのです。セブンは、他社との競争を加盟店だけの負担で勝ち抜こうとしたのです。当然のことながら、セブンは他のチェーンに較べて大量の廃棄を出しています。自然環境を守り、資源を無駄遣いしないという社会の流れに完全に逆行しています。

  それでは、なぜセブンはセブン方式を説明しなかったのでしょうか? セブンが加盟店にきちんと説明すると、加盟店は負担が増えるのを恐れて仕入を増やさなくなるからです。だからできるだけ説明しないことにしたというわけです。加盟店は黙ってセブンの従業員のカウンセリングに従って、攻めの仕入と販売という経営すればいいと考えているのです。


    ところが、この方式には一つだけ弱点がありました。加盟店が値下げ販売を行って廃棄を減らされるとセブンの利益が減るということなのです。加盟店も、売上の割には店の利益が少ないと感じ始め、試行錯誤した結果、値引き販売にたどりつきました。セブンはこの弱点を克服するため、目覚めた加盟店のオーナーにカウンセリングという名の下に、値引き販売をさせないという圧力をかけて、可能な限り値引き販売をやめさせることにしたのです。その意味で、セブンの説明義務違反と値引き販売の制限とは裏腹の関係にあります。圧力をかけても言うことを聞かないオーナーに対しては、セブンは、経営方針と合わないという理由で加盟店契約を解消するという最終手段に出てきます。それが怖いため、加盟店はなかなか値引き販売をできないというわけです。


    しかし、中には勇気のあるオーナーもいて、セブンのやり方は独禁法違反だとして公正取引委員会に訴えでた結果、平成21年6月、公正取引委員会は、セブンに対し優越的地位を濫用したとして排除措置命令を出したのです。


    セブンは、これをきっかけに各加盟店が続々、値引き販売に踏み切るのではないかとおそれ、廃棄小品の原価の15%をセブンが負担し、値引き販売をいくつかの条件の下で認めるという方針変更を行い、何とかこのビジネスモデルを維持しようとやっきになっています。

 


    こうした状況の中で出された今回の判決は、初めて説明義務違反と販売価格拘束の違法性を認めていて、セブンのビジネスモデルの一部を違法と判断したという意味で画期的な意義を有しています。


    セブンは、この福岡判決を「承服できない」とコメントしたと報道されていましたが、これは本音だろうと思います。そうでなければ、セブン方式についての説明をパンフレットにして配布するなどの変更をしていたはずだからです。セブンはかつて最高裁判所の補足意見で、契約書は明確性を欠いているとの指摘を受けながら、わかりやすいものに変えようとしませんでした。この問題はセブンのビジネスモデルに関わることから、もっと追いつめられないかぎり、変更はしないのではないかと思います。原発事故で経験したように、私たちの社会や組織は、痛い目にあわない限り、不都合な真実に対して向き合おうとしない傾向がありますが、セブンも同様のようです。


    これからコンビニを経営しようと考えている方は、こうしたビジネスモデルまでよく理解した上で契約することをお勧めします。すでに契約された方は、地元の弁護士と相談しながら、値引き販売を始められてはいかがでしょうか? 思っていた以上に店の利益が増えるかもしれません。